埃から誇りへ

@hokori_me

小説「言の葉の庭」を読んだので書く

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昨日の深夜、新海誠監督の映画「言の葉の庭」がテレ朝で放映されていたのでぼんやりと観ていた。

映画館で上映していた4年前に1度観ていて、切ない雰囲気と美しい映像が心地よくて好きな映画の一つになったことは覚えていた。
今回も4年前と変わらず雰囲気も映像も心地よくとても楽しめた。

変わっていたことはあれから4年経って僕は27才になり雪野さんと同じ年になっていたことで、
「27歳の私は15歳の頃の私より少しも賢くない。私ばっかりずっと同じ場所にいる」というセリフは、大学を卒業しても就職せずにプログラミングをしながら小金を稼ぎ、自己嫌悪と鬱に襲われながらひきこもって暮らしている僕には、実感を伴って重く感じられた。

どこか日常に退屈さや憂鬱さを抱えているような大人びた雰囲気を持っていて、雪野さんに出会ったことでより強く夢に向かっていく孝雄君もとても魅力的だけれど、
缶ビールとチョコレートというアンバランスな組み合わせを好んでいる裏には、理不尽に社会に潰され味覚障害や鬱に苦しんでいるという理由が存在していて、自分と向き合おうともがいているような雪野さんにはどうしてもより魅力を感じてしまう。

そんな二人が空間を共にすることで、お互いに惹かれあっていく情景は憧れるし、やっぱり素敵な映画だった。

っていう感じだったんだけれど、観終わった後の余韻を抑えられず、そのままの勢いで朝まで小説版の言の葉の庭を読んでから完全に意見が変わってしまい、この雪野という女は本当に嫌いだし気持ち悪いなと感じた。

別に小説がダメなわけではなくすごく面白い。映画では出てこないエピソードが盛りだくさんで、映画では出てこなかった孝雄君の兄の話は心に残った。

こいつらみんなばかなんじゃねえか。オレは苛々と胸のうちで毒づく。辿り着くはずもないゴールに、それ以外の場所は存在しないような勢いでひたすらに走り続けている。どいつもこいつも。ふいに今日二回目の涙が込み上げてくる。なんて日だ、今日は。
うらやましいのだ、オレは。
誰にも聞こえないように鼻をすすりながら、オレは決して口には出せないその気持ちを、必死に胸の中に押し戻そうとする。

ただ嫌いだ。あの女は嫌いだ。
バーでナンパされ、和歌や小説の心の動きについて会話しているのにも関わらず、「お姉さん浮気したことあるの^^?」みたいな情緒のかけらもなくセックスのことしか考えていないクソリプ野郎とラブホに行ったところで悲しくなってしまいもうダメだった。
別に処女性を求めているわけでもナンパについていくなと言っているわけではない。
結局ホテルのロビーでとってつけたような美談もどきのエピソードで思いとどまり引き返すのだけれど、むしろクソ男のチンコ舐めてクソチンコ挿入されて腰振ったあとで徹底的に自分と向き合うような描写があったら好きになっていたかもしれない。
お前が毎日読んでいる小説や、古典教師になるほど大好きだった和歌からお前は何を感じてきたのか。
お前の寂しさは結局誰といても埋まるようなものなのか。
お前は誰なんだ。

人としてキャラクターとして、芯や核のようなものがない気がしてすごく気持ちが悪かった。
美人であることの恩恵を多量に受けているのに、ブスに憧れるエピソードも気持ちが悪い。美人であること以外にどこに魅力があったのかよくわかなくなってしまった。
ホテルのシーンが一番好きだという意見はわりと見たので僕がおかしいだけだとは思うのだけれど。

新海さんのインタビュー読んでたら、そもそも人間的な魅力も持って描こうと思っているわけではないようだから物語的にはどちらでもいいのだろう

—「小説 言の葉の庭」には、雪野さんのほかにも魅力的な女性が登場しますが、これは新海監督の好みが投影されているのですか?

(笑) もちろん魅力的に描きたいと思っています。でも雪野さんは実際にいたらちょっと大変そうな人だと思いますね(笑)友達として楽しく飲めるというタイプではないかもしれない。でも、人のそういう陰のような部分に惹かれてしまう、というのは男女問わずわりとあるんじゃないでしょうか。
ファンとのコミュニケーションから生まれた「小説 言の葉の庭」 新海誠インタビュー


映画も小説も好きなのに、書評やレビュー見てたら同じような意見がなくつい書き殴ってしまった。
というかこの人映画監督なのになぜこんなに文章も上手いのだろうか。

新海さんが自己投影させてる人物っていなそうだけど、この辺だけは新海さんの声な気がして、一応物作って生きている身としては心に残った。

なにかになりたいって気持ちを持った若い子は、それはいっぱいいるんだよ。そういう若い子はネットでもやたら質問してきたり、ひたすら批評めいた言葉を覚えたり、他人の作品に攻撃的になったりしがちなんだ。
でも本当に、本当に心の底から何かを創りたい人は、誰かになにかを訊いたり言ったりする前に、もう創ってるんだ。

どうすれば映画作れますか?みたいな質問ってうんざりするほど聞かれるんだろう、きっと


アフィつけてないけど一応リンク貼っておきます。

小説→映画より映画→小説の方が楽しめるんじゃないかなと思います。
Amazonのレビューで書いてあって納得したけれど、映画版が大好きな人の場合小説は映画とは別の世界・パラレルワールドと思った方がいいかもしれない。

おわり。